―　本日はお集まりいただき、有難うございます。各町の有志で立ち上げた大黒流総合サイトが公開10周年を迎え、記念の座談会を企画しました。現在、サイトには3500枚以上の写真が集まっています。その中から時代を映す印象的な写真を選びました。写真をご覧いただいて、関連したお話をお聞かせください。

―　早速ですが、ちょっと変わった目を引く山笠を紹介します。この写真は内藤さんにとても関係の深い山笠ですね。
内藤　これは、懐かしかね。
―　昭和45年の追山櫛田入り。当番は「川中」。飾りは同年に開催された大阪万博のシンボル・太陽の塔です。棒さばきは内藤さんのお父様。それにしても、とても奇抜な飾り物ですね。
内藤　太陽の塔は、芸術家の岡本太郎さんの作品たいね。岡本さんの事務所まで許可ばもらいに行って、「山笠ならばいい」て言われたったい。
―　追山馴しの写真には櫛田神社の古い能舞台が写っています。斬新な飾り物と能舞台の対比が面白いですね。

―　次の写真は昭和39年、「中つ」が当番の町総代記念写真。人形はオッペケぺー節で有名な新派劇の父、川上音二郎です。平成12年の「古ノ一」の当番の時も、飾りは音二郎ですね。
浦�ｱ　川上音二郎は、今の「古ノ一」の出身やけんね。昭和39年の山の時に(永田)英治と一緒に撮った写真があるもんね。小学低学年のころ、帽子ばかぶって。見送りに、二人で私服のまま台上がりしとうとが。
永田　当時は、そげなことばしても別に何も言われん、おおらかな時代やったね。
―　写真の中央で地下足袋を履かれた方が初代の山笠振興会長の落石栄吉さんですね。
浦�ｱ　まだまだ、お元気なころやね。

―　少し時代をさかのぼって、飾りが人形じゃない山笠の写真を見てみましょう。これは昭和33年、お宮の飾り物です。当番は「妙楽寺」です。
浦�ｱ　子供が書いた標題が山に差しちゃあね。
永田　(左肩の)三番台下は持田のしんちゃん。わが町内やばってんが、棒に付いとうとは、初めて見たやね。
黒岩　しんちゃん、山ば舁きよったとですねぇ…。
―　次は昭和35年、「下つ」が当番です。大きな「額」ですね。飾りの額の上に、さらに差し物の額があります。
内藤　この山には確か、見送りがあったっちゃない。
―　そうです。大きな大黒さんの顔が見送りです。


―　次の写真は昭和38年、「下す」が当番の年で、飾りは「神輿」です。
浦�ｱ　神輿(山笠)の上に神輿やね。
黒岩　二段杉壁になっとりますね。
内藤　脇におるかき手たちは他流やね。うちの町内ば通った時に、拍手ば送られようね。

―　今では見ることがなくなったのが、大黒流の引き出し山です。飾り山がある中洲、東、千代流が現在もやっています。大黒流は戦後、昭和29年、34年、45年が引き出し山でした。この写真は昭和29年、「東下新」（現、川中）の引き出し山です。
内藤　飾りが残ったまんまの山小屋ば、舁山が通り抜ける「トンネル山」やったけん、毎日、飾りば外すとが大変やったごたあよ。
　　(司会者・昭和34年・当番「下新」、同45年・当番「川中」の写真を紹介)
浦�ｱ　(昭和45年の)太陽の塔が最後の引き出し山やった。40年以上も前になるっちゃね。
―　もっと昔には上(かみ)の町だけでなく、下(しも)の町にも引き出し山がありました。この写真は昭和10年、「上い」が当番の時のものです。
浦�ｱ　戦前は当番町の多くが引き出し山やったっちゃないかいな。
黒岩　昭和の初めに「大下」(現、つノ一)が初めて当番ばした時に、飾り山ば作って、引き出し山やったて聞いとりますもんね。
永田　飾り山とかき山の両方建てるとは、相当お金がかかりよったろうね。
　　(司会者・昭和13年、大正4年の飾り山を紹介)