―　次は町界町名整理の頃です。博多は昭和41年にブロック(街区)ごとの町割りに変わり、流内でも町の再編がありました。この頃に登場したのが、大黒流の統一の水法被です。写真は昭和42年、追山の櫛田入り。法被の背文字が「大黒」です。この年に、統一法被が登場しました。昭和44年の他流舁の写真では子供たちも統一法被を着ています。
永田　この法被はまだ持っとうよ。ただ、私自身は着とらんかもしれん。浅葱の「大黒」の法被もあったもんね。わざわざ作っとうとよね。
浦�ｱ　当時は統一法被のほかにも、新旧の町の法被ば着た舁手たちがそれぞれにおったね。
黒岩　私は子供のころに何年か、「大黒」の法被ば着た覚えのありますね。ただ、それも短い間やったけど。

―　統一法被はあまり着られることなく、姿を消しました。やはり、町への愛着が強かったのでしょうか。
内藤　「大黒」の統一法被よりも、それぞれに新町の法被ば作って(山に)出だしたけん、(統一法被を)見らんごとなったっちゃないかいな。
永田　(当時の新町で)現在のすノ一の法被には「すの一」と「須一」の二通りがあって、最初の頃がひらがなの「すの一」やもんね。
黒岩　つノ一の法被の襟にある「對下」の「下」は、旧町の「大下」の名残ですばい。
浦�ｱ　うち(古ノ一)の法被の襟の文字「古組」は旧町の法被のままやんね。新しかとは「古ノ一」ばってん、今も「古組」ば着とう人のおるよ。
黒岩　「大黒」の統一法被やったら、どこの町内やら分からんけん、着らんごとなったとかも知れんですね。
内藤　そういえば当時は法被に、(区別のための)町名を書いた肩章ば付けとったね。


―　次は、山のそばや山に上がって遊んでいる子供たちの写真をご覧ください。
　　（対談者一同、あれは誰、これは誰と懐かしい幼馴染みの姿を見つけて話が弾む）
―　子供たちが楽しそうで、とてもおおらかな時代ですね。ところでこの当時は、山笠の参加者が少なかった頃でもあります。松囃子と合わせて、当時の写真をご覧ください。
浦�ｱ　昭和四十年代の後半は、特に参加者が少なかったもんね。
内藤　松囃子も確かに少なかった。
永田　松囃子の全体(全員の集合)写真の人数が、今の当番町一町分ぐらいの数やったね。
浦�ｱ　山笠では、うちの町内の参加人数は二十人くらい。お汐井取りはたった二列で、前後ばよその町に挟まれて走りよった。当時は本当に地元の人しか出とらんけんね。
―　参加者が増え始めたのはいつ頃からですか
内藤　昭和五十年代からやね。
浦�ｱ　やっぱり、マスコミの影響やろうね。テレビで中継やらして。
―　昭和五十年代には、山笠の東京、ハワイ遠征。福岡博への参加などの出来事もありました。
―　ただ、山笠が盛んになる一方で、祭りに(追山に向けた)「真剣勝負」の色が濃くなって、昔のようなおおらかさが薄れたように感じますが。
浦�ｱ　昔の子供は「野放し」やった。小銭ば持って山に出て、櫛田神社で買い食いするとが楽しみやった。
内藤　子供だけで自由にしよったね。今のごと、流舁の時に全コースば走る子供やらおらんかった。
浦�ｱ　水鉄砲とかも持って行ってくさ。
永田　それこそズックばはいて、山に出とう小学校時代の写真ば見たら、写っとうメンバーが、今でも山に出よる顔ぶれやもんね。
黒岩　なるほど、そげん言われてみたらそうですなぁ。
永田　(昔から)山に出とう面子は、そげん変わっとらん気がするちゃんね。
浦�ｱ　そう言えば、昔の子供たちは赤べこやった。
黒岩　小学校に上がる頃までは、みんな赤べこばしとりましたね。
永田　そうそう、それで「白」に憧れとったもんね。
―　「赤」には魔除けの意味があると言いますから、関係があるのかも知れませんね。